パリオリンピック放送 担当チームオリンピックの感動を伝えたい。 世界を舞台に活躍するfmtメンバー。

Introduction
2024年夏、世界中が熱狂したパリオリンピック。今回は、実際に技術チームとして放送に携わった6名で、現地での仕事内容ややりがい、そしてオリンピックを通じて得た学びをテーマに座談会を実施。貴重な舞台裏と知られざるエピソードをお届けします。

撮影取材部
宍戸さん
2004年入社
カメラマンとしてのキャリアは13年目(当時)。普段は現場にて、野球やサッカーをはじめとするスポーツニュースの撮影取材を担当。オリンピック競技取材への参加は今回で夏季・冬季通算7回目。

撮影取材部
古寺さん
2023年入社
カメラマンとしてのキャリアは7年目(当時)。普段はスポーツの試合会場にて、スポーツニュースの撮影取材を担当。オリンピック競技取材への参加は今回で3回目。

制作技術部 SW・カメラ
三上さん
2014年入社
VEとして入社後、入社4年目にSW・カメラへ異動し、カメラマンとしてのキャリアは7年目(当時)。普段は、カメラマンとして、サッカー、ロードレース、野球、バレーボール、ゴルフなどのスポーツ中継業務を担当。オリンピック競技中継への参加は今回で2回目。

制作技術部 音声
小玉さん
2013年入社
普段はスポーツ中継の音声として、野球、ゴルフ、バレーボールなどの中継業務を担当。オリンピック競技中継への参加は今回が初。

照明技術部
田澤さん
2019年入社
VEとして入社後、入社3年目から照明技術部へ。普段は歌番組、ドラマ、映画などの照明業務や、ロードレースのVE業務を担当。オリンピック競技中継への参加は今回が初。

制作技術部 映像技術
横井さん
2002年入社
普段はフジテレビの生放送番組に関する業務を担当。オリンピック競技中継への参加は今回で2回目。
Session - 01
オリンピック放送に携わるには?

Session - 02
現地では、どんな仕事をしましたか?

宍戸さん
私の所属するスポーツニュース班は開会式の前日に現地入りしました。現地のニュースデスクが決めたその日の注目競技を、私とディレクターの2人で取材をしに行きます。ENGカメラに、迫力のある映像と共に選手の想いを収めるというのが私の仕事です。どの競技会場でも緊張感はありましたが、現場の最前線で仕事ができる幸せを感じ、ハードスケジュールながらも充実感に満ち溢れていました。

三上さん
私が担当していた陸上競技の現場では、競技が始まる4日くらい前に会場に入って、スタジアムでセッティングをはじめました。オリンピックの期間中には、朝6時頃から始まるデイセッションと夜遅くまで行うナイトセッションの両方を、5日間ほど撮り続けるなんてこともありましたね。

古寺さん
丸1日以上かかる中継はハードそうですね。私は、いろいろな競技の試合や練習風景を撮って回っていました。前半の期間は地方の会場で行われるサッカーやバスケットボールの取材に行くことが多かったですね。

田澤さん
私はスタジオ中継がメインだったので、パリ支局にいることが多かったです。少人数チームで中継を回すために、音声さんを手伝ったり、照明に限らずさまざまな業務を行っていました。fmt班の中では最も早く現地入りし、合計42日間滞在しました。

横井さん
私もオリンピックの開始1ヶ月前から現地入りして、40日ほど滞在しました。到着後、まずはパリから離れた場所に放送拠点の組み立てを行い、オリンピック期間中は主に映像を管理する業務を担当し、問題が起きた時のトラブルシューティングも行いました。

Session - 03
海外での仕事ならではの大変さ

三上さん
海外ならではといえば、食生活が大変でした。レストランで外食をしたり、会場近くの売店で購入したりすると割高になってしまうので、テイクアウトが中心だったんです。陸上のスタジアムの近くにあるファストフード店に、週7で通っていました。

横井さん
一番大変だったのは、水泳の中継です。試合中に映像が届かないというトラブルが発生してしまったんです。拠点から水泳会場まで急いで対応に向かい、また拠点に戻って作業して…と慌ただしかったのを覚えています。ただ、オリンピックの全期間を通して私のチームではそこまで大きなトラブルはなかったので、それは本当に何よりでした。

田澤さん
照明担当としても大きなトラブルはなかったものの、横井さんの基地とスタジオの回線が開幕数日前まで繋がらなかったのには焦りましたね。数週間前から準備を始めていたのですが、現地の業者さんも多忙なためギリギリでの作業になってしまい、ずっとヒヤヒヤしていました。

古寺さん
日本と同じようにはいかないことも多いですよね。私は電車で移動することが多かったのですが、フランスでは新幹線が全然時間通りにこないんです。体操の練習を撮るために、離れた街まで新幹線で向かった日があったのですが、途中で止まってしまって…。駅員さんに聞いても原因や復旧時間が分からず、結局3時間くらい待ちました。練習にはギリギリ間に合ったものの、もし間に合っていなかったら…と考えると恐ろしいなと。

小玉さん
現場に入ってからインタビュー用の機材が壊れてしまった時は本当に大変でした。 オリンピックの競技中継では持ち込む機材も全て申請が必要なので、念のため予備をたくさん持っていくということができません。今ある機材でなんとかしなくちゃいけないということで、一緒に動いていたカメラマンのスマホを借りて乗り切りました。オリンピックの競技中継の現場でそういうことが起きると、普段の日本での仕事以上に臨機応変な対応が必要になるんです。

宍戸さん
私はスポーツニュース取材特有の、1人での対応が特に大変でしたね。撮影を屋外で行っていた時に、炎天下で私自身が熱中症っぽくなってしまったんです。なんとか予選と決勝の間に飲み物を買いに行けたものの、売店の待機列が長すぎて間に合いそうになく、背に腹は変えられないと思って水道水でしのぎました。やはりいろいろなピースがうまくはまらないと、良い仕事はできないですよね。私が熱中症になってしまっては元も子もないですし。オリンピック取材では、特にそういった部分があるなと思いました。

Session - 04
fmtの仕事でときめくのは、どんな時?

横井さん
私は業務上、放送を監視する役割なので、試合に見入ることはできません。ただ、休みの日に試合を観戦した時は、パリ市内の歴史的な建造物で競技が行われていることに感動しました。特に、フェンシング会場のグラン・パレの雰囲気は美しくて。パリオリンピックでしか経験することのできない文化や人々の雰囲気を実際に体感できたのは、とても良かったなと思いました。

小玉さん
ちょっと角度が違うのですが、仕事現場で印象的な場面がありました。陸上の会場で中継の撮影をしていた日のことですが、たまたま隣にいたフランスの放送局のスタッフが、柔道団体決勝、それもフランス対日本の試合を見ていたんです。試合が展開されるたびに、お互いどんどん応援に熱が入っていって、試合後には「いい試合だったね」と握手を交わすまでになりました。文化祭のような感覚で、全員が言葉や国境を越えて一緒の時を楽しめたのは、本当に良い経験でしたね。

田澤さん
私にとっては、一緒に仕事をするメンバーとの関係性が大きかったですね。現地では機材だけでなく人も限られているので、オリンピック期間中はずっと同じチームメンバーで協力しながら進めなくてはいけません。私の担当は照明ですが、音声やカメラも担当したりして、制作も技術も関係なく業務に取り組んでいました。1か月間ほぼ毎日一緒に過ごしながら、チーム一丸となってオリンピックを届けるという経験ができて、とてもやりがいを感じました。

三上さん
自分の中で印象に残っているのは、4×100mリレーの男子決勝です。アンカーまでは日本チームがトップだったんですが、結果的に日本チームは惜しくも5位。お客さんの歓声で会場が異様な空気に包まれているのを肌で感じると同時に、日本選手が悔しさをあらわにする様子、呆然とした表情をカメラを通して目撃した瞬間は、今でも忘れられません。どんなに会場が盛り上がっていても、私たちは仕事として、日本選手の悔しがる姿を映さなければいけない。その瞬間を日本の皆さんに映像として届けられた瞬間にときめきを感じました。感動や勇気を与えられるのはアスリートであり、私たちの仕事が、それを日本、そして世界に伝える手助けになっていればと思います。

宍戸さん
オリンピックは華やかさ以外にも魅力がありますよね。撮影取材部では、試合だけでなく、前々から選手の取材を行います。その中で過去の栄光や挫折など、オリンピックに至るまでの過程を知ることができるので、実際に試合を見た時に、より大きな感動があります。選手達の頑張る姿を通じて、画面の向こうの誰かに勇気を与えることができると思うと、オリンピック競技取材は本当に伝えがいがあるなと感じます。

古寺さん
継続して取材するからこそ、選手のストーリーを知ることができますよね。オリンピック前から取材している選手が本番を迎える時は、彼らが舞台に立っている姿を見るだけでも心が動かされます。彼らの集大成を見届けることができたという事実こそが、「オリンピック競技取材に携わることができてよかった」という思いにつながっています。

Session - 05
オリンピック放送を経験して、感じること

田澤さん
今回一緒になったメンバーとの関係はこれで終わりではなく、むしろこれからもっと大切になってくると思います。他の分野の方の目線を知ることができたことで、より現場でスムーズな動きができるようになるのではないかなと。だからこそ、今後は自分の専門分野だけでなく他の分野の知識も積極的に学びながら、一つの業務を突き詰めるだけでなく、さまざまな知識をクロスさせて仕事の幅を広げていきたいです。

三上さん
私は今後もオリンピックの競技中継に携わりたいので、反省点からも学び、今後どのような技術や知識を身につけるべきかを考えていきたいなと思いました。今回の経験をモチベーションとして、今後も頑張っていきたいです。

小玉さん
技術とは、制作のイメージを具現化する仕事です。オリンピック期間は制作の方とコミュニケーションをとる機会が多くあったので、制作側の意図を自分なりに咀嚼して理解し、適切な表現をするためにはどうすればいいのかより深く考えるようになりました。

Session - 06
学生へのメッセージ

田澤さん
オリンピックの競技中継に参加したいと思っている学生の方には、単純に思える仕事でも一生懸命取り組み、誰かにとって「替えのきかない存在」になることが大事だと伝えたいです。我々の仕事は技術を習得していく仕事なので、その中で「この人にお願いしたい」と思われる存在になることが大事なんです。そのためにも、日々の仕事に対して一生懸命に取り組んでほしいです。

古寺さん
fmtでは、意欲さえあればオリンピック競技取材にも挑戦する機会が得られます。私が今回携わることができたのも、誰でもチャンスが貰える環境が整っていたからだと思います。ぜひ、fmtで一緒に色々なことにチャレンジしましょう。お待ちしています。

三上さん
技術者として、オリンピックでアスリートたちが生み出す感動を、世界に届ける手助けができたこと、とても誇りに思います。もし、世界に感動を届けたいと思っている学生がいたら、ぜひfmtに入ってチャレンジしてほしいです。

宍戸さん
現場では過密なスケジュールで大変な日々が続きますが、オリンピックという大舞台で心打たれる瞬間を撮影できたことは、何物にも代えがたい経験でした。そして、そのような経験の積み重ねが、今の私を形作っています。何かを乗り越えたり、真剣に向き合うからこそ得られる感覚は誰しもが感じたことがあるものだと思います。辛いように思えることも、その先の未来をイメージして、今何をすべきか、どのような選択するべきか、未来を見据えながら「今」を大切にしてほしいです。

横井さん
海外での撮影は楽しいこともありますが、トラブルありきな世界でもあります。普段日本ではトラブルなどなくても、海外では一気に状況が変わるので、そこも含めて楽しめるようなマインドを持って、オリンピックの競技中継に臨んでほしいなと思います。

小玉さん
海外は生活環境・文化も違い、日本の業務環境からガラリと変わります。その中で普段通りの能力を発揮するには、日常の業務での経験・知識がどれだけ身に付いているかが重要です。fmtは多ジャンルの番組制作を担っていて、現場によって学べる事は様々ですので、オリンピックの様な中継業務に関わらず様々な業務に興味を持って頂けたら嬉しいです。

古寺さん
オリンピックの競技取材に参加するメンバーは、人選も含めてデスクの方が決める場合が多いですね。私が所属しているフジテレビチームでは、「若くて動ける方に任せよう」と若い人が選ばれる傾向にありました。
宍戸さん
撮影取材部は、カメラや音声などさまざまな役割に臨機応変に対応する必要があります。体力はもちろんのこと、能力や経験を加味して選んでいるんだと思います。
小玉さん
デスクからの指名以外に、各部のチーフが「この人と組みたい」と指名することもありますよね。私の場合、後輩が音声を統括するチーフで、指名をもらいました。配属が決まった時は「足を引っ張らないように頑張らないと」と、かなりプレッシャーを感じたのを今でも覚えています。
三上さん
そうですね。あとは普段の業務でスポーツ中継に携わっていたり、スポーツ関連の経験がある人が選ばれる傾向にあったと思います。