照明技術部×照明技術部数多くの映画やドラマを手掛けてきた スペシャリストたちが語る、照明の魅力とは。 Vol.2

Introduction
光をデザインしてドラマや映画に生命を吹き込み、作品の魅力を一層引き立てる照明の仕事。今回のクロストークでは、vol.1に続き、数多くの作品を手掛けてきたスペシャリストたちが今までで印象的だったエピソードや、賞を受賞した時の気持ちや思い出話に花を咲かせました。

照明技術部
加瀬さん
数多くのTVドラマを担当し、代表作のドラマ「踊る大捜査線」の映画化を機に、「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」から照明技師として映画撮影に活動の場を移す。同作で日本アカデミー賞優秀照明賞を初受賞し、その後も担当映画作品で受賞を重ねるなど、fmtが誇る照明技師の第一人者。

照明技術部
富沢さん
若くからLDとしてコント番組を担当。望んでいたドラマ業務に従事してから、以降多くのフジテレビドラマを担当し名作も数多く手がけた。「Dr.コトー診療所」シリーズや「教場」シリーズなど、幅広い作品ジャンルにおいて丁寧なライティングで作品の世界観を表現している。

営業部
木村さん
多くのTVドラマや映画に関わり、自身が担当した読売テレビ・日本テレビ系「愛を乞うひと」では日本映画テレビ技術協会で映像技術賞を受賞するなど、技術の高さを証明した。その後も配信ドラマなど多岐に渡り活躍しながら、現在はドラマ・映画のテクニカルプロデューサーとしても日夜奔走している。

照明技術部
川埜さん
幅広いジャンルの業務を行いながら、ドラマ業務に関わりを深めてきた。テレビ朝日系「緊急取調室」「BG」でフロアチーフ及びセカンドLDとして実力を付け、映画「ゴッドマザー」、フジテレビスペシャルドラマ「PICUスペシャル2024」「監察医朝顔2025新春スペシャル」などを手掛けるなど、fmt照明技術部中堅社員ののエース的存在。
Session - 01
撮影中大変だったエピソード、印象に残っている作品は?

Session - 02
fmtでは歌番組やイベントなど、さまざまな仕事がある。

富沢さん
僕は違うジャンルの現場でいろんな照明さんのライティングを見ているのが好き。これ綺麗だなとか、この人上手だなとか。同じ機材を使っても同じようにはならないよな、とか思いながら見ているな。あれだけ広いホリゾントっていう広い壁に光で絵を描いているので、すごいなと思う。

木村さん
ホリゾントを使った音楽番組って昔はたくさんあったから、そこで自分の腕を試すことができる、みたいな側面もあったかな。土星をどうやって光で表現するかなとか考えながら仕事するのが楽しかったですね。

加瀬さん
ムービングライトを初めて使ったのは「少林少女」。色を自由に出せて、動かすことができるっていうのが特徴で、それを使おうと最初に言ったのは(木村)伸じゃなかったかなと思ってる。フィルターを駆使しながらやったけど、フィルムカメラだったこともあって、光量が足りなくてその時はあまりうまくいかなかったけど、「こういう使い方もあるんだな」と勉強になりましたね。その後も「踊る大捜査線」とかで使い出して、とても便利なライトだなと思っています。動くものは使い方を間違えなければ効果的に使うことができるということを学ぶことができましたね。

川埜さん
僕はドラマで培ってきたことが歌番組やコント番組で役立つことが結構ありますね。歌番組はいつやっても面白いなとは思います。別の現場を経験することで活かされる事もあるのがfmtの特徴ですね。色々なジャンルの現場に行くことで閃きに繋がることもあります。

Session - 03
作品の完成、賞の受賞に関して


富沢さん
完成した作品をみても、反省の方が多いんじゃないですか?ここよくできたなと思うことももちろんあるけれど、もっとここはこうしたほうが良かったかな、と思うこともある。出来上がった後に見て、「完璧だよ!」なんて言えないね。

加瀬さん
編集した後のものを見ると、自分が想像していたよりも面白くなっていることが多いね。「キングダム」なんかは特に、自分の想像できていないものが映像になって出てくるので、「監督はここまで考えていたんだ」だったり、画の迫力だったり、やっぱり完成したものを見てびっくりする事ばかりだったかな。編集がとても上手い監督もいて、撮影段階よりも何倍も面白くなって完成していることもあるよね。そういう時はやっぱり、こちらが考えている以上のものを仕上げてくる監督ってすごいんだなって実感します。

富沢さん
加瀬さんなんかはいっぱい賞を受賞しているでしょ?「キングダム 大将軍の帰還」では昨年に引き続き、日本アカデミー賞優秀照明賞受賞。最優秀賞の発表はまだだけどね。おめでとうございます。

加瀬さん
ありがとうございます。日本アカデミー賞優秀照明賞を受賞できたことは非常に光栄なことだと思っています。日本のアカデミー賞はアメリカやイギリスと違って会員による投票なので、作品がヒットして多く観られた作品が獲りやすい、というのが一つの特徴なのかなと。だからこそ自分だけの力ではないと思っているし、ヒットすることってとても大事なことだと感じます。

木村さん
でも同業者が多いアカデミー会員から支持されているってことですもんね?

加瀬さん
そうですね、それは嬉しいです。余談だけど、アカデミー賞と名をつけられるのは日本とアメリカとイギリスの3カ国しかないんだって。

一同
へ〜!!!


富沢さん
俺も加瀬さんみたいにレッドカーペット歩きたいな〜!

Session - 04
照明の仕事でトキメキを感じる瞬間

加瀬さん
自分が役者さんにピンスポットを当てて、お客さんがわぁっと沸いた時に、二十歳の頃の自分はトキメキを感じていたかな。「冗談画報」っていう番組のことは今でも覚えているよ。

富沢さん
それでいうと、大きなコンサートとかでも明転した時に、お客さんから歓声が上がるとやっぱり気持ちは上がりますね。

木村さん
僕も若い頃に代々木第二体育館で行われた「アジアバグース!」っていうコンサートでLDをしたんですけど、曲のサビでライトを動かした時にお客さんから歓声が上がった時はトキメキました。

川埜さん
僕は昔から見ていた番組に携わった時、役者さんから1人の照明技術者として対話をすることができた時はトキメキを感じましたね。

富沢さん
役者さんに「照明がすごく綺麗」って言ってもらえた時は嬉しかったな。ちなみに石原さとみさんに「天才だよね」って言われたことがあるんだけど、その時はときめいたね。

Session - 05
就活中の学生へメッセージ

富沢さん
照明に興味がある人と一緒に働きたいな。

川埜さん
何にでも興味がある人は照明に向いている気がしますね

富沢さん
今はYouTubeやネットメディアで色々な映像が見ることのできる時代だけど、テレビとか映画を見ることが好きな人の方が照明という仕事に興味が湧くんじゃないかなと思います。

木村さん
fmtが携わっている作品を見て、fmtに来てくれると嬉しいです。

加瀬さん
今はスマホでも4Kで撮影可能で、誰でも綺麗な映像を瞬時に撮影できる時代になっているけれど、fmtの映像はプロの集団が作っている。スマホで撮れるからこれでいい、じゃなくてプロの集団の中で、プロの技術者になるっていうことを目指すことができる人に来てもらいたいですね。

木村さん
最近やった作品で、90秒を70本撮りだったのがあるんだよね。
富沢さん
70本!?
加瀬さん
1日に何本撮影するの?
木村さん
これがまたバラバラなんですよ。撮影する場所は基本オフィスなんですけど、居酒屋とかだったり、会議室だったりで、撮影する順番もバラバラでしたね。
富沢さん
それって何日で撮影するの?
木村さん
6日間だったかな…。原作が漫画で、アニメもやってるんだけど、これは面白いから見てたな。でも、70本もあると事前には台本を読みきれないので、大変だったかな。
川埜さん
あれ、縦型のドラマでしたっけ?
木村さん
そうそう、縦型のドラマ。縦型ドラマは上にも下にも照明を仕込めないから大変なんですよね。普段の横画面のドラマと違って、上も下も写っちゃうからね。
加瀬さん
iPhoneで撮影してるの?
木村さん
FX3を縦にして撮ってました。もう僕、縦型ドラマ2回やっているので、皆さんにも縦型ドラマのオファーがあれば、なんでも聞いてくださいね!
一同
心強い!!
木村さん
加瀬さんが参加していた、某撮影チームのカメラテストは大変なんですよ。4トントラック満載の機材を使ってカメラテストをやっていました。
加瀬さん
え、そんな大変なカメラテストやったっけ?(笑)
木村さん
やりましたよ!!一つのスタジオでシーン毎に何個もセットを作ってちゃんとやるから、機材量も多いし大変なんです。でも、カメラテストをちゃんとやるのは大事だし、良い経験にもなりましたね。
加瀬さん
カメラテストの段階では、セットも役者も違うから、本番を想定する上で、ゴールまでの100%全部はイメージできないんだよね。「失敗ありきでカメラテストをやれ」という監督もいるくらい。カットやシチュエーションを部分的にしか作ることができないので、その部分部分でイメージするようにしてるかな。
木村さん
「キングダム2」で言うと、清野菜名さん演じる羌瘣がターンターンターンとジャンプするシーンがあったんですよ。
加瀬さん
あぁ、あれは大変だったね。
木村さん
あのシーンは機材センターでも照明部だけが集まって何度もテストをやってから、その後のカメラテストに挑みましたね。自然に見えなきゃいけない中で、羌瘣が持つ技を表現する、って言うのが難しかったですね。加瀬さんはエフェクトにもこだわっていて、表現の仕方が難しかったですね
加瀬さん
あれは勉強になりましたね。いろいろな人のダメ出しももらった。電飾の回り方が自然になるように社内で開発して、自然でかつ面白いエフェクトにはなりましたね。
木村さん
あとは、「室井慎次」では、小泉今日子さん演じる無期懲役囚・日向真奈美が面会室で娘と話すシーンの表現の仕方に頭を悩ませました。小泉今日子さんの顔がどういう風に見せられるのかっていう研究をするために、いろんなアクリル板を間に挟んでテストしましたね。結局、スリットが入ったアクリル板を使用することで、顔が動いた時にできた影で顔が見える、みたいな表現の仕方になりました。
加瀬さん
小泉今日子さんの顔を見せた方がいいのか、最後まで見せずに声だけで表現した方がいいのか、どこで顔を見せるのがいいのか、撮影当日まで監督もカメラマンも悩んでたんだよね。監督の元のプランも、カメラマンの考え方も違ったりして、いろんなことがバラバラだったけど、最終的にはこうなりました、って感じかな。
木村さん
あれ良かったよね。
富沢さん
「空から降る一億の星」の最終回なんかは、夜のシーンの撮影の時に大雨が降ったまま夜が明けちゃったり、霧が強くて照明が見えなかったりしたね。雨繋がりだと、「教場」の雨ふらしも印象的だったかな。照明的には何も問題はなかったんだけど、水がなくなったりして現場的には大変そうだったよね。
川埜さん
僕は、ちょうど入社1年目の時に加瀬さん、木村さんと一緒に携わった「少林少女」が初めての映画で今でもはっきりと覚えていますね。静岡での撮影で、連日眠い目をこすりながら仕事していましたね。機材の量もすごく多くて、雪もすごく降っていた場所での作業もあって大変でしたね
加瀬さん
そんなことあったっけ?
川埜さん
初めての映画で慣れていないことだらけだったので、僕にとっては印象的だったのかもしれませんね(笑)